ファイル変換サイトは安全か
PDFを結合したい、画像を圧縮したい——検索して出てきたサイトに、 そのままファイルを上げていませんか。 そのファイル、本当に外に出してよいものでしたか。 煽るつもりはありません。事実を整理します。
「アップロード」が何を意味するか
ファイルを選んで変換ボタンを押した瞬間に何が起きているか、意識されることは多くありません。 アップロード型のサービスでは、こうなっています。
- ファイルが丸ごと相手のサーバーに送られる
- サーバー上でファイルが開かれ、中身が処理される
- 変換結果がサーバー上に作られる
- あなたがダウンロードする
- 一定時間後に削除される(と説明されている)
つまり1〜5の間、あなたのファイルは他社のサーバーに存在しています。 これ自体は技術的に必要なことで、悪意があるという話ではありません。 問題は、そのファイルが外に出してよいものだったかです。
よくある誤解:HTTPSなら安全?
「鍵マークがついているから安全」と考えられがちですが、 HTTPSが守っているのは通信経路だけです。
経路上での盗み見は防げます。しかし届いた先のサーバーでは、 ファイルは復号されて普通に扱われます。 でなければ変換処理ができません。 「途中で盗まれないこと」と「預けた先で安全なこと」は、まったく別の話です。
利用規約を一度読んでみてください
多くの変換サイトの利用規約には、次のような条項があります。 悪質だという話ではなく、サービスを運営する以上ある程度必要な記載です。 ただし、読んだ上で判断する価値はあります。
| 削除までの時間 | 「アップロードから○時間後に自動削除」。その間は存在します。 バックアップやログに残る可能性もあります |
|---|---|
| サービス改善のための利用 | 品質向上のためにデータを利用する旨の記載。範囲は規約によります |
| 第三者への委託 | 処理基盤に外部のクラウドを使う旨の記載。関わる会社が増えます |
| 免責 | 「万一の漏えいについて責任を負わない」。何かあっても救済されません |
そして最も大事な点。削除の約束は、運営者を信頼することが前提です。 利用者側から検証する手段はありません。
会社の規程に触れていませんか
個人的な写真であれば、判断はご自身の裁量です。 しかし仕事のファイルとなると話が変わります。
多くの企業の情報管理規程には、 「業務上のデータを許可なく外部サービスへ送信してはならない」 という趣旨の条項があります。無料の変換サイトへのアップロードは、 これに該当する可能性があります。
- 顧客の氏名・住所・連絡先が載っているもの(個人情報保護法の対象)
- 見積書・契約書・請求書(取引先の情報が入っています)
- 人事・給与に関するもの
- 未公開の企画書、技術資料
- 医療・法務など、守秘義務が明確にある分野の書類
「ちょっとPDFを結合したいだけ」でも、そのPDFの中身が上のいずれかなら、 一度立ち止まる価値があります。
では、どうすればよいか
現実的な選択肢は3つです。
| 1. 手元のソフトで処理する | 最も確実。Acrobatや画像編集ソフトを持っているなら、それが一番です。 ただし有料で、導入に承認が要ることもあります |
|---|---|
| 2. 会社が契約したサービスを使う | すでに契約があるなら、そちらを使うのが筋です。 契約に守秘条項が含まれているためです |
| 3. ブラウザ内で完結するツールを使う | ファイルが端末から出ません。無料で、導入も不要。 この記事を載せている当サイトがこの方式です |
ブラウザ内処理とは何か
近年のブラウザは、かつてサーバーでしかできなかった処理を ブラウザの中だけで実行できるようになりました。 PDFの結合も、画像の圧縮も、動画の変換すら、送信せずに行えます。
仕組みはこうです。ページを開いたときに処理プログラムがあなたの端末に届き、 そのプログラムがあなたのパソコンの中でファイルを処理します。 ファイルは移動しません。動くのはプログラムのほうです。
副次的な利点もあります。容量の上限がなく、アップロードの待ち時間もありません。 サーバーの費用がかからないので、無料で提供しやすいという事情もあります。
自分で確認する方法
ここが肝心なところです。「送信していません」という言葉を信じる必要はありません。 ご自身で確認できます。
- ツールのページを開く
- F12キーを押して開発者ツールを開く
- 「ネットワーク」タブを選ぶ
- その状態でファイルを読み込ませ、処理を実行する
- 通信の一覧を見る
ファイルが送信されていれば、ファイルサイズに見合った大きな通信が
POSTとして現れます。何も出なければ、送信されていません。
当サイトのツールで試していただければ、処理中に新しい通信が発生しないことが見えます。 詳しくは安全性についてにも書いています。
公平のために書いておくこと
アップロード型のサービスが常に悪いわけではありません。 ブラウザ内処理にも弱点があります。
- 端末の性能に依存します——大きな動画では、サーバー処理のほうが速いことがあります
- OCR(画像から文字を読む処理)のような重い処理は不得意です——当サイトも対応していません
- 古いブラウザでは動きません
要は使い分けです。公開資料や自分の写真ならアップロード型でも困りません。 他人に見せられないファイルのときだけ、送らない方法を選ぶ。 それだけで、リスクの大半は避けられます。
まとめ
- アップロード=他社のサーバーにファイルが存在する時間ができる
- HTTPSが守るのは経路だけ。預けた先の話は別
- 削除の約束は検証できない
- 業務ファイルは社内規程に触れる可能性がある
- F12のネットワークタブで、自分で確認できる